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エンジニア組織のAIコーディングに対するPMが確認すべきこと

エンジニア組織のAIコーディングに対するPMが確認すべきこと

Claude CodeやGitHub Copilotなどの生成AIツールがエンジニアの日常業務に浸透し、コーディング作業が劇的に効率化される時代になりました。
しかし、AIが生成するコードの品質管理について十分な対策を講じているでしょうか?

AIによるコード生成は確かに高速ですが、品質保証は別問題です。. 私がこれまで企業研修で関わってきた多くのプロジェクトでは、AIコーディングの導入初期に品質面での課題が発生することが少なくありません。
「AIが書いたから大丈夫だろう」という思い込みが、後々大きな問題を引き起こすケースを何度も見てきました。

今回は、AIコーディング時代にPMが押さえるべき品質管理のポイントを、実践的な観点から詳しく解説していきます。
TDD(テスト駆動開発)の実践から、コミット前の自動チェック、CI/CDパイプラインでのセキュリティ検証まで、AI生成コードの品質を担保するための具体的な手法をお伝えします。

AIコーディングにおけるPMの新たな役割

AIコーディング環境では、PMの品質管理責任がより重要になります。

AIによるコード生成は高速である一方、セキュリティ脆弱性や設計上の問題を含む可能性があるためです。
従来のコードレビューだけでは対応しきれない新たなリスクが生まれています。

例えば、ChatGPTが生成したデータベース接続コードにSQLインジェクション脆弱性が含まれていたケースや、GitHub Copilotが提案したコードに著作権上問題のあるライセンス違反が発生したケースなど、AIツール特有の問題が報告されています。

PMは、AIコーディングのメリットを活かしつつ、品質とセキュリティを確保する新たなフレームワークを構築する必要があります。

TDD実践による品質担保の仕組み作り

TDD(テスト駆動開発)は、AI生成コードの品質を担保する最も効果的な手法の一つです。

AIは機能的なコードを生成できますが、要件の細かいニュアンスや例外処理まで完璧に理解できるわけではありません。
先にテストケースを作成することで、AI生成コードが本当に求められる仕様を満たしているかを確実に検証できます。

実際の開発フローとしては、以下のようなステップを推奨しています。

  1. 要件定義からテストケース作成 → PMがビジネス要件を明確化し、エンジニアがテストケースを先に実装
  2. AI生成コードの適用 → ChatGPTやCopilotでコード生成
  3. テスト実行と修正 → 自動テストで不具合を検出し、人間が修正

Claude Codeを提供しているAnthropic社もテスト駆動開発はAI駆動開発に有効であることを発表しています。
この「テストファースト」の考え方が、AI時代にはより重要になっているのです。

コミット前フックによる自動品質チェック

Git hooksを活用した自動チェック機能は、AI生成コードの品質問題を早期発見する必須の仕組みです。

人間のコードレビューだけでは、AI特有の問題(コードスタイル、セキュリティ、ライセンス違反など)を見落とす可能性があります。
自動化されたチェック機能により、問題のあるコードがリポジトリに混入することを防げます。

具体的には、以下のようなチェック項目を自動化することをおすすめしています。

  • 静的コード解析 → ESLint、CodeQLなどによる品質チェック
  • セキュリティスキャン → SAST(Static Application Security Testing)ツールでの脆弱性検出
  • 機密情報チェック → コードに含まれる問題がありそうな文字列(API Keyなど)の自動検出
  • コードフォーマット → PrettierやBlackによる自動整形

私が導入支援を行った企業では、pre-commit hookによって潜在的な問題を自動検出し、CI/CDにおけるビルドでのエラーを大幅に削減できました。
このように、自動チェック機能により、AI生成コードの品質を確実に担保する開発プロセスを確立できます。

CI/CDパイプラインでのセキュリティ強化

また、CI/CDパイプラインにセキュリティ検証を組み込むことで、AI生成コードのセキュリティリスクを最小化できます。

AI生成コードには、学習データに含まれる古いセキュリティ対策や、コンテキストを理解しきれないことによる脆弱性が含まれる可能性があります。
継続的な自動検証により、これらのリスクを早期に発見・修正できます。

効果的なCI/CDセキュリティパイプラインには、以下のような要素を含めることが重要です。

  • DAST(動的解析) → 実際に動作するアプリケーションへのセキュリティテスト
  • 依存関係脆弱性チェック → Snyk、OWASP Dependency-Checkによるライブラリスキャン
  • コンテナセキュリティ → DockerイメージやKubernetesマニフェストの安全性検証
  • インフラストラクチャ検証 → TerraformやCloudFormationテンプレートのセキュリティチェック

多層防御的なセキュリティパイプラインにより、AI生成コードの安全性を確保しましょう。

コードレビュー体制の再構築

そして従来の方法でやりがちですが、AI時代のコードレビューは従来とは異なる観点とプロセスが必要です。
AIが生成するコードは構文的には正しくても、ビジネスロジックの理解不足や、プロジェクト固有の制約への配慮が不十分な場合があります。

効果的なAI時代のコードレビュー体制として、以下のような仕組みを推奨しています。

  • AIによるコード生成へのマーキング → プルリクエストでAI使用箇所を明記
  • 段階的レビュー → アーキテクチャレビュー/機能レビュー/セキュリティレビューの順次実施
  • ペアレビュー制度 → シニアエンジニアとジュニアエンジニアによる相互チェック
  • 外部コード検証 → 定期的な第三者によるコード監査

ご存知の方も多いかと思いますが、AI生成コードは一見完璧に見えても、微妙なバグやパフォーマンス問題を含んでいることがあります。
人間の目による最終確認は、どれだけ自動化が進んでも欠かせない工程です。

人間とAIの特性を理解した新しいコードレビュー体制により、品質とスピードを両立できます。

ドキュメント化と知識共有の重要性

設計の段階から意図と制約を適切にドキュメント化することで、長期的な保守性を確保できます。

AIコーディングはその生成過程や判断根拠が不透明なため、後から修正や機能追加を行う際に困難が生じる可能性があります。
したがって、設計の段階から先にAIへの指示出しや要件を明確化した状態で進めることによって、多くの場合、生成されるコードを改善可能です。
また、適切なドキュメント化により、コードの意図を明確にし、チーム全体での理解も促進できます。

実践的なドキュメント化アプローチとして、以下を推奨しています。

  • AIプロンプト履歴の保存 → どのような指示でコードが生成されたかの記録
  • 設計判断の文書化 → なぜそのコードを採用したかの理由
  • 制約事項の明記 → コードの限界や注意点
  • テストケースの充実 → コードの動作を保証するテスト群

私が支援している企業では、AIによって生成されたコードに関する知識ベースを構築し、チーム全体でベストプラクティスを共有することで、開発効率と品質の両面で大きな改善を実現しています。
適切なドキュメント化により、AIコーディングの利点を最大化し、リスクを最小化できます。

まとめ - PMとして押さえるべき運用指針

重ねて書きますが、AIコーディング時代のプロジェクト管理では、従来の手法に加えて新たな観点が必要になります。
ここまでご紹介した内容を踏まえ、私がおすすめする運用指針をまとめると以下のようになります。

  • AI利用ガイドラインの策定 = どのような場面でAIツールを使用し、どのような制約があるかを明文化することが重要
  • 品質ゲートの設定 = AIが生成したコードが本番環境に到達するまでの複数のチェックポイントを設定
  • 継続的な学習と改善 = AI技術は日進月歩で進化しているため、昨日のベストプラクティスが明日には陳腐化する可能性がある

これらの取り組みを通じて、AIの生産性向上メリットを享受しながら、品質とセキュリティを確保したプロジェクト運営を実現できるのではないでしょうか。

AI時代のプロジェクト管理や、チームのAIリテラシー向上にお悩みの企業様がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

AIネイティブなエンジニア組織の構築こそが、これからの競争優位の源泉となります。
今こそ、新しい時代に適応した開発プロセスを構築していきましょう!

プロジェクトマネジメント
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田邉 佳祐

田邉 佳祐

代表取締役/エンジニア/IT講師

エンジニア・PM/PdMとして多くのソフトウェア案件に参画し、IT講師としても活動中。