「また会議ですか?」
こんな風に思ったことはありませんか?
日本企業の会議文化は、しばしば生産性向上の障害になっていると言われています。本日は、弊社で行っている企業研修で得た知見をもとに、この「会議依存症」を解決するためのアイデアをご紹介したいと思います。
企業や職域によって変動はありますが、人によっては丸一日会議でスケジュールが埋まってしまうケースもあります。これは決して無視して良い状況ではありません。 しかし、会議の本質と組織文化の見直しにより、この時間を大幅に削減し、社員の皆さまの創造性と生産性を高められる可能性があるのです。
これからお伝えする内容は、「会議依存症」の実態から、ITを活用した効率的な情報共有の方法、さらには次世代リーダーを育成する新しい会議スタイルまで多岐にわたります。
皆さまの職場環境を改善するヒントが見つかれば幸いです。それでは、具体的な内容に入っていきましょう。
日本企業の会議文化は、しばしば「会議依存症」と揶揄されるほど根深い問題となっています。
では、具体的にどのような実態があるのでしょうか。
1日のうちどれくらいの時間を会議に費やしているか計測したことがある人は多くないかと思います。(計測すると落ち込むかもしれません)
Capterra社の調査によると、日本の会社員は21%が「会議が多すぎる」と感じているとのことです。
ただし、先進国では比較的、この「会議が多すぎる」と感じる値が多くなっており、日本だけの問題ではないようです。
ドイツの11%と比べると、日本企業の「会議大好き体質」が浮き彫りになりますが、この問題は世界各国で発生しています。皆さんの会社ではいかがでしょうか?もしかしたら、平均以上に会議をしているかも、と感じていたら注意すべき傾向です。
コロナ禍でのリモートワーク普及により、多くの企業でオンライン会議の頻度が増加したという顧客からの相談もありました。
対面でのコミュニケーション不足を補うため、以前より多くのオンライン会議が行われるようになった傾向が見られます。ただし、具体的な増加率は企業によって大きく異なります。
ZoomやMicrosoft Teamsなどのツールの導入により、確かに簡単に会議が設定できるようになりました。
しかし、その手軽さゆえに不要な会議も増加し、「ズーム疲れ」という言葉が生まれるほど、連続的なオンライン会議による疲労感が新たな問題となっています。皆さんの職場でも、似たような状況はありませんか?
実は、会議には目に見えない大きなコストがかかっているのです。
仮に平均年収600万円の社員10人(一人当たり時給3,000円換算)で1時間の会議を行うと、約3万円の人件費コストがかかります。これを週1回の1時間の定例会議として1年間続けると、年間で約100万円以上のコストとなるのです。
この試算を全社員に当てはめると、多くの企業で年間数億円規模の「会議コスト」が発生している可能性があります。
会議の必要性や効率性を考えると、このコストは決して小さくありません。皆さんの会社でも、この視点で会議を見直してみると、驚くべき金額が見えてくるかもしれません。
会議室や画面の向こうで、皆さんは日々どんな会議を重ねているでしょうか?
効率的で生産的な会議もあれば、「これは必要だったのだろうか」と首をかしげるような会議もあるかもしれません。実は、過剰な会議文化は、気づかないうちに組織に様々なダメージを与えている可能性があるのです。
各企業の研修講師として経験を重ねてきた中で、会議の多さが引き起こす5つの深刻な問題点が見えてきました。
これから紹介する「5つの病巣」は、一見すると個別の問題のように思えるかもしれません。しかし、実はこれらは密接に関連し合い、組織全体の生産性と競争力を徐々に蝕んでいきます。
それでは、組織の健康診断と題して、これらの問題点を一緒に見ていきましょう。
皆さんの会社の現状と照らし合わせながら、改善のヒントを探っていけたらと思います。
多くの決断が求められる会議が続いた後に、「もう決められない」と感じた経験がある方は少なくないでしょう。
これはいわゆる「デシジョンファティーグ」と呼ばれる現象です。過度な会議参加により、重要な意思決定に必要な精神的エネルギーが枯渇してしまうのです。
その結果、後半の会議では十分な注意力が払えず、重要な決定が先送りにされたり、安易な判断がなされたりする危険性が高まります。
これは組織全体の意思決定の質を低下させ、ビジネスチャンスを逃す原因にもなりかねません。
こんな声が社内で聞こえてきたら要注意です。
各部署が自分たちの会議に忙殺されるあまり、他部署との情報交換の機会が減少します。その結果、部門ごとの「サイロ化」(情報が共有されず独立した状態)が進み、組織全体としての一体感や協力体制が失われていきます。これは特に、各部門の連携や協力が必要なプロジェクトの遂行に大きな支障をきたします。
「会議で決まったから」。
この言葉の裏に潜む、組織の重大な落とし穴について考えてみましょう。
多くの人が参加する会議では、往々にして責任の所在があいまいになりがちです。決定事項の実行責任が特定の個人や部署に明確に割り当てられないまま、会議が終わってしまうのです。
この「責任のあいまい化」は、決定事項の実行スピードを鈍らせ、最悪の場合、何も実行されないという事態を招きます。
結果として、組織全体の実行力が低下し、競争力の喪失につながる可能性があります。
さらに、未来を担う若手社員たちが、なぜ会議文化に疑問を感じているのでしょうか。
過剰な会議は、特に若手社員のモチベーション低下を引き起こす原因となっています。
自身の業務遂行や能力開発の時間が奪われ、会議での発言機会も限られがちな若手社員は、徐々に仕事への充実感を失っていきます。
その結果、優秀な若手人材の離職率上昇につながり、組織の将来的な生産性低下や離職率の増加を招く恐れがあります。
過剰な会議は、組織の要である中間管理職にとって深刻な問題をもたらしています。
過剰な会議文化は中間管理職の「燃え尽き症候群」の主要因の一つとなっている可能性があります。上層部と現場の橋渡し役として、彼ら彼女らは数多くの会議に出席を求められる傾向にあるのです。
その結果、本来の管理業務や部下の指導に充てるべき時間が大幅に削られ、長時間労働や過度のストレスにつながります。
中間管理職の疲弊は、組織全体の生産性低下や人材育成の停滞を引き起こす可能性があります。
ここまで見てきたような問題はすでに顕在化されており、多くの企業がITツールの活用などによって解消を試みています。
しかしながら、ITツールの導入だけでは、真の「脱・会議依存」は実現できません。
組織文化を変革し、新しい働き方を定着させるための戦術が必要です。
ここでは、弊社が顧客企業で効果を実感してきた5つの革新的な戦術をご紹介します。
遊び心を取り入れつつ、全社的な取り組みとして会議削減を推進する試みです。
各部門で、3ヶ月間の会議時間削減率を競うコンテストを実施します。削減率の計測には、主にカレンダーアプリの会議とされている時間を抽出することで行います。
優勝部門には全社発表の機会を設け、どのように会議削減を実現できたか、それによって得られた効果について発表してもらいます。
毎週水曜日を「ノー会議デー」に設定してみる試みです。
この試みは比較的多くの企業があらかじめ実施していました。
この日は原則として会議を開催せず、各自が集中して業務に取り組む時間とします。
緊急性の高い案件は、チャットツールでの簡潔なやり取りで対応します。
この取り組みにより、会議に頼らない業務遂行方法を模索する機会が生まれます。
また、集中作業の時間が確保されることで、社員の生産性向上や創造的な業務の促進にもつながります。
すべての会議は原則15分以内とし、どうしても必要な場合でも30分を超えないようにします。
また、参加者は「2枚のピザで満足できる人数」に制限します。つまり、最大でも6-8人程度です。
この2つのルールを組み合わせることで、会議の目的が明確化され、議論が効率化されます。
また、絶対的に必要な人員のみが参加することで、意思決定のスピードが向上し、不要な会議が自然と淘汰されていきます。
従来の稟議制度を逆転させ、決裁者が現場に出向いて直接判断を下す仕組みを導入します。
これにより、複数の会議体を経由する従来の意思決定プロセスが大幅に短縮されます。
例えば、新規プロジェクトの承認が必要な場合、担当者が資料を持って上層部を回るのではなく、決裁権限を持つ上司が現場に赴き、その場で判断を下します。
この方式により、意思決定のスピードアップと、現場の実情に即した判断が可能になります。
各会議の効果を数値化し、可視化する仕組みを導入します。
具体的には、会議にかかったコスト(参加者の人件費×時間)と、会議で生み出された価値(決定事項の経済的効果など)を比較し、ROI(投資対効果)を算出します。
この「会議ROI」を定期的に公開することで、社員の間に会議の効率性に対する意識が高まります。
ROIの低い会議は自然と見直しの対象となり、本当に必要で生産的な会議のみが残っていく文化が形成されるでしょう。
過剰な会議文化を改革することは、単に時間の節約だけでなく、次世代リーダーの育成にも大きく寄与します。
ここでは、「反・会議文化」を通じて、いかに未来のリーダーを育てていくかについて、3つのアプローチをご紹介します。
従来の会議では、上位職の発言が議論を支配しがちでした。
この慣習を打破し、若手の斬新なアイデアを引き出すため、「逆ピラミッド会議」を導入しましょう。
具体的には、会議での発言順を役職の逆順にします。
最も若手のメンバーから順に意見を述べ、最後に上位職が発言します。これにより、若手社員が萎縮せずに自由に意見を述べる機会が生まれ、リーダーシップ能力の早期育成につながります。
また、上位職は傾聴力を磨く機会を得られ、組織全体のコミュニケーション能力向上にも寄与します。
ただし気をつけなければいけないこととして、発言を促すことがハラスメント行為につながらないよう注意が必要です。
部門を超えた小規模プロジェクトチームを結成し、若手社員にリーダーを任せます。
このプロジェクトでは、従来の会議形式ではなく、アジャイル開発で用いられるスクラムミーティングのような短時間かつ頻繁なコミュニケーションを採用します。
例えば、新商品開発プロジェクトに営業、企画、技術部門から若手社員を集め、2週間ごとの成果物提出を目標に活動させます。
この過程で、若手社員は部門を超えた調整能力や、効率的な意思決定スキルを習得していきます。
月に一度、若手社員が主体となって「失敗推奨型報告会」を開催します。
ここでは、各自が経験した失敗事例とそこから得た学びを共有します。この報告会は、従来の成功事例の共有会とは一線を画し、失敗を隠さず議論する文化を醸成します。
報告会では、失敗の内容だけでなく、その原因分析と今後の改善策についても発表します。
上位職は批判を控え、建設的なアドバイスに徹します。
この経験を通じて、若手社員はリスク管理能力や問題解決能力を高め、失敗を恐れずチャレンジする精神を養います。
ここまで、過剰な会議がもたらす問題点とその解決策、そして新しい組織文化の醸成について見てきました。
これらの取り組みを通じて、皆さんの組織はより効率的でクリエイティブな環境を作りやすくなっていくはずです。しかし、企業として本当の意味でイノベーションを実現するためには、それを担う人材の育成が不可欠です。
会議に依存しない新しいマネジメントスタイルを身につけたプロジェクトマネージャー(PM)の存在が、これからの組織には欠かせません。
こうした次世代型PMの育成は、決して容易なことではありません。しかし、適切な研修プログラムを通じて、確実にスキルアップを図ることができるのです。
弊社では、現在そういった次世代を担うリーダーシップを執る人材育成を提供する「PM人材研修プログラム」を試験的に少数の顧客に導入させていただいております。
この研修では、以下のようなスキルを集中的に強化します。
本研修を受講することで、貴社の管理職やPM候補生は、「脱・会議依存」時代に適応した最新のマネジメントスキルを身につけることができます。
今こそ、過去の慣習にとらわれない、新しいマネジメントスタイルを学ぶ絶好の機会です。ぜひ一度弊社にご相談いただければ幸いです。
個別のご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。