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AI時代のSEO戦略は苦難の道──ゼロクリック時代を生き抜く"ブランド×体験"の打ち手とは

AI時代のSEO戦略は苦難の道──ゼロクリック時代を生き抜く"ブランド×体験"の打ち手とは

「なぜ最近、アクセス数が急激に減ったのでしょうか?」

この質問を、ここ数ヶ月で何度も耳にするようになりました。
実際、多くの企業サイトで検索流入が大幅に減少しており、中には70%以上もアクセスが減ったというケースも報告されています。その背景にあるのが、2025年に本格展開されたGoogleのAI Overviewsと、ゼロクリック検索の拡大です。

これまでのSEO戦略は「検索上位=アクセス増」という前提で組み立てられていましたが、AI時代ではその常識が通用しません。
ユーザーは検索結果のページで完結してしまい、わざわざサイトを訪問する必要がなくなったのです。しかし、だからといってSEOが不要になったわけではありません。
むしろ、より戦略的で高度なアプローチが求められています。

私が日々お客様とお話しする中で感じているのは、この変化に適応できている企業と、従来の手法に固執している企業の間で、明確な差が生まれているということです。
今回は、AI時代のSEOで直面する「苦難」と、それを乗り越えるための実践的な戦略をお伝えします。

なぜ今「苦難の時代」なのか?── 3つの現実

まず、なぜ現在のSEOが「苦難」と呼ばれるような状況になっているのか、その背景を整理してみましょう。

ゼロクリック検索比率が70%を超えた現実

現在、検索クエリの約70%がクリックされることなく完結しています。
これは「ゼロクリック検索」と呼ばれる現象で、2019年と比較すると20ポイント以上も増加しています。特にモバイル環境では75%に達しており、ユーザーは検索結果画面で得られる情報だけで満足してしまうケースが大半なのです。

これは本当に深刻な問題で、従来のように「検索上位に表示されれば流入が増える」という前提が崩れてしまっています。どれだけ良質なコンテンツを作成し、検索上位を獲得しても、それがアクセス増につながらない可能性があるのです。

AI Overviewsによる「回答先取り」の影響

Googleが展開するAI Overviewsは、検索結果の冒頭でAIが要点を要約して表示する機能です。これにより、ユーザーは元のサイトを訪問することなく、必要な情報を得られるようになりました。クリックするのは「さらに詳しく知りたい」と感じた一部のユーザーのみという状況です。

この変化は、特に情報提供型のコンテンツに大きな影響を与えています。「○○とは何か」「○○の方法」といったキーワードで上位表示されても、AI Overviewsで答えが表示されてしまうため、サイトへの流入は激減してしまうのです。

コアアップデートとスパムポリシー強化

2024年から2025年にかけて、Googleは連続してコアアップデートを実施し、同時にスパムポリシーも強化しました。
この結果、テンプレート的な量産記事や、AI生成のみに依存した低品質コンテンツは軒並み順位を下げています。

特に厳しく評価されているのは、独自性や専門性に欠けるコンテンツです。
これまで通用していた「キーワードを詰め込んだボリュームの多い記事」では、もはや上位表示は望めません。

変わる評価軸 - キーワード主義から「体験&信頼」主義へ

AI時代のSEOでは、評価軸が根本的に変わっています。
これまでのキーワード中心の最適化から、体験と信頼を重視したアプローチへのシフトが必要です。

E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の重要性

Googleが重視するE-E-A-Tは、Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字です。特に「Experience(経験)」が追加されたことで、実際の体験に基づく一次情報がより高く評価されるようになりました。

例えば、単に「プロジェクト管理ツールの比較」記事を書くのではなく、「実際に当社で6ヶ月間使用した3つのツールの使用感と業務改善効果」といった、実体験に基づくコンテンツが求められています。
これは本当に重要な変化で、机上の空論ではなく、実際の経験と成果を共有することが価値につながるのです。

AI Overviews最適化の必要性

AI Overviewsに選ばれるためには、明確な構造化と精選された見出し、信頼できるソース表示が重要です。
Googleは公式に、「簡潔で分かりやすい回答」「適切な構造化データ」「権威性のあるソース」を推奨しています。

これまでのSEOでは「検索結果でのクリック」を目標としていましたが、AI時代では「AI回答での引用」も重要な指標となります。
つまり、直接的な流入は減っても、ブランド認知や信頼性向上につながる可能性があるのです。

コーポレートサイトが取るべき5つの戦略

それでは、具体的にどのような戦略を取ればよいのでしょうか。私が推奨する5つのアプローチをご紹介します。

① 体験ドリブン・リサーチ記事の強化

自社のデータ、実際の事例、時には失敗談も含めて公開することが重要です。
執筆者のプロフィールを明示し、一次ソースを適切に示すことで、AIと人間の両方に「唯一の一次情報」として認識してもらえます。

例えば、「ChatGPT導入により当社の業務効率が30%向上した具体的な施策と課題」といったタイトルで、実際のデータと具体的な改善プロセスを共有するのです。
このような記事は、他では得られない価値ある情報として、多くの引用を獲得する可能性が高くなります。

② E-E-A-T強化フレームワークの実装

専門家によるレビュー、著者の詳細なバイオグラフィー、定期的な更新履歴、外部からの被引用を可視化することで、コアアップデートに対する耐性を高めます。

これは地味な作業に思えるかもしれませんが、実際にはSEO効果に大きく影響します。
特に、専門性を示すための著者情報の充実は、検索エンジンだけでなく、読者の信頼獲得にも直結する重要な要素です。

③ On-SERPプレゼンス拡大

FAQページ、使い方、製品、著者情報などの構造化データを実装し、各H2見出しの直下に150字程度の要約を配置することで、AI Overviewsやフィーチャードスニペットでの表示確率を向上させます。

この施策は、直接的なクリック獲得だけでなく、検索結果画面でのブランド露出を最大化する効果があります。
ユーザーがクリックしなくても、ブランド名を目にする機会が増えることで、長期的なブランド認知向上につながるのです。

④ ブランド・コミュニティ投資の拡大

SNS、YouTube、ポッドキャストなどで話題を拡散し、ブランド名での検索ボリュームをKPI化します。
指名検索(ブランド名を含む検索)の増加は、ランキングの安定化に直結します。

これは非常に重要なポイントで、検索流入が減少する一方で、ブランド認知度の高い企業は相対的に有利になっています。
ユーザーが何かを調べる際に、真っ先に思い浮かぶブランドになることが、AI時代のSEO成功の鍵となるのです。

⑤ AI-Readyコンテンツの作成

本文抜粋可能ポリシーを設定し、拡張サイトマップを通じてLLM(大規模言語モデル)の学習を許諾することで、各種AI回答での引用シェア獲得を目指します。

これは少し上級者向けの施策ですが、将来的に重要性が増すアプローチです。
AIが学習しやすい形でコンテンツを提供することで、より多くのAI回答で引用される可能性が高まります。

新たなKPI設計で成果を測定する

AI時代のSEOでは、従来のKPIでは成果が見えにくくなっています。新しい指標を設定することが重要です。

従来のページビュー中心の評価から、AI Overviewsでの「詳細はこちら」リンククリック数、フィーチャードスニペット掲載数、ブランド名指名検索ボリューム、AI・LLM回答内での引用回数などを重視するべきです。

特に重要なのは、最終的なMQL(Marketing Qualified Lead)やサブスクライブ率を主指標とすることです。
アクセス数が減っても、質の高いリードが獲得できていれば、ビジネス成果としては成功と言えるでしょう。

AI時代を生き抜くための実践的アプローチ

ここまでお話ししてきた内容は、確かに従来のSEOと比べて複雑で、習得には時間がかかります。
しかし、これらの変化に適応できれば、競合他社に対して大きなアドバンテージを得ることができるのです。

重要なのは、一度にすべてを変える必要はないということです。
まずは自社の強みを活かせる分野から始めて、段階的に新しいアプローチを取り入れていくことをお勧めします。

AI時代のSEO戦略は確かに困難な道のりですが、正しいアプローチを取れば必ず成果は出ます。私たちは、多くの企業様がこの変化に適応し、新しい時代で成功を収めるお手伝いをしています。

もしAI時代のSEO戦略について詳しく知りたい、または自社の現状について相談したいということがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
貴社の状況に合わせた最適な戦略をご提案いたします。

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田邉 佳祐

田邉 佳祐

代表取締役/エンジニア/IT講師

エンジニア・PM/PdMとして多くのソフトウェア案件に参画し、IT講師としても活動中。